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【ICGレポートVOL.743】台湾有事に欠かせない香港の存在 05/08/2022

  • 執筆者の写真: ICGレポート
    ICGレポート
  • 2022年9月20日
  • 読了時間: 3分

8月3日、電撃的にナンシー・ペロシ米下院議長の台湾を訪問した。「一つの中国」の大義の下、中国の政府高官は事前に相次いでアメリカに対して警告を発してきた。中国外務省の趙立堅副報道局長も、ペロシ氏が台湾を訪問すれば、「中米関係の政治的基盤に深刻な悪影響をもたらす」と述べ、「中国は主権と領土の一体性を守るために強力かつ断固とした措置を取る」とした。

いずれにしても今後の米中関係の悪化は避けられないが、それよりも台湾海峡における緊張が一段と高まることは間違いない。

台湾海峡の有事を想定した場合、いったいどのような対立構図となるのだろうか?アメリカ側には地政学的リスクを負う日本、台湾、フィリピン、ベトナム、そして消極姿勢ではあるものの韓国が駆り出される可能性もある。そして中国側にはロシア、そして手駒として民主主義陣営から切り離しに成功した香港、マカオが付くことになる。中国にとって最も利用価値があるのが香港である。


香港はインフラと財政面の両方から頼りになる。中国の華南地区でもっとも港湾や空港が整備されているのが香港である。米国際空港評議会(ACI)の統計を見てみると、新型コロナ前の2018年の貨物取扱量は香港が世界で第1位である。そして空港利用旅客数でも世界第8位(北京が世界2位)となっている。また香港と台湾との直線距離は、わずか700キロである。中国の空軍としては戦闘機を飛ばすには空母だけでは限界がある。大規模な整備空港が必要になってくる。

アメリカがグアムと沖縄を戦略拠点としているのと同様に中国は香港、珠海、マカオを含む華南地区のインフラが非常に重要になってくる。アヘン戦争や第二次世界大戦でイギリスが香港に固執したのは、やはり戦略的な戦闘拠点として香港の立地やインフラが大きかった。 財政面では外貨準備高は、2021年末時点で世界第7位の4970億ドル、香港政府の剰余金は1810億香港ドル(3兆770億円:2022年3月)となっている。金融インフラの整っている香港では株式市場での資金調達も可能である。


その期待に呼応する形で香港の李家超新行政庁長官は、ペロシ下院議長の訪台に対して「『一つの中国』という原則への挑発。」 そして「香港で1国2制度の実践が成功していることを無視している。」と強く批判している。問題は香港に居住する地元民の心構えであろう。親日家が多く、コロナ前の年間訪日観光客は100万人を超える。その香港市民が自覚の有る無しに関わらず、中国側の立ち位置から日米に対抗しなくてはならなくなった。台湾問題は、香港市民にとっても厳しい現実となって立ちはだかってくる。


本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤りがないことを保障するものではありません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。



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