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【ICGレポートVOL.792】 クレディスイス危機でスイス金融の土台は揺らぐ? 01/04/2023

  • 執筆者の写真: ICGレポート
    ICGレポート
  • 2023年4月1日
  • 読了時間: 2分

一連の金融不安が台頭して、クレディスイスから資金の流出が止まらなくなったのが3月16日の事であった。欧米の金融当局は巨大金融機関の危機に金融市場を崩壊させないようにプレッシャーを掛けていた。それがスイス国立銀行(中央銀行)、スイスの財務省、スイスの規制当局の連邦金融市場監督機関(FINMA)をわずかな時間で動かし、もう一方のスイスの巨大金融機関UBSを動かす要因となった。買収金額は30億米ドルで合意し、UBSがクレディスイスを買収した後に起こり得る潜在的損失に対してもスイス国立銀行が2000億米ドル以上の流動性の確保と、90億米ドル以上の政府保証を与えることになった。


クレディスイスは、マネーロンダリングに関連した取引やレバレッジを利かせたリスキーな取引を厭わずアメリカを中心とした欧米諸国でビジネスを拡大させてきた。そこには保守主義スイスの金融取引の姿はない。アメリカ政府・金融当局との関係も2008年のリーマンショック以来、良好とは言えず、常に摩擦を起こしてきた。スイス金融当局にとっては、「劣等生」との位置づけであった。


仮に今回のクレディスイス危機が世界に伝播し、金融危機を更に拡大させていたならば、何百年にも渡って築いてきたスイスの金融立国としての地位は失墜していたはずである。 しかしながら伝統的なプライベートバンクはスイス政府・金融当局のもと健全性を保っているところがほとんどである。半期の決算毎に金融当局は銀行幹部との面談を経て、個々の金融機関の経営状況を常に把握し、個別に具体的な経営改善を要求している。依然としてスイスのプライベートバンクの経営における信頼は揺るがない。


クレディスイスのようにグローバル化が進み、欧米スタイルのリスキーな経営に転換した金融機関は別として伝統的なスイスのプライベートバンクは今も健在である。また今回のわずか数日の救済劇におけるスイス政府・金融当局の「決断」はスイスの金融ガバナンスを世界に再認識させたかもしれない。



本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤りがないことを保障するものではありません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。



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