【ICGレポートVOL.851】 欧州中央銀行(ECB)の真の狙いはドイツ救済 02/02/2024
- ICGレポート

- 2024年2月2日
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アメリカで3月の利下げ観測が遠のく中、ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)による大幅利下げが囁かれている。現時点での主要政策金利は4.5%に据え置かれているが、市場では4月に0.25%の利下げが行われる確率が90%に達し、6月までに0.5%の利下げが織り込まれている。2024年1月のユーロ圏における消費者物価指数(CPI)が前年同月比+2.8%と前月の同2.9%から低下した。
欧州委員会統計局(Eurostat)によるとユーロ圏20か国の2023年第四四半期の成長率は、前年同期比0.1%となった。景気は横ばいに近い状態にある。原因はユーロ圏最大の経済規模を誇るドイツ経済の不振によるところが大きい。ドイツの2023年通年の成長率は、前年比で0.3%のマイナス成長となった。2023年12月には失業率が5.9%まで上昇している。新型コロナ前の水準との比較でも2019年のGDPの規模を0.7%程度しか上回っていない。ドイツ経済はいわば構造不況に追い込まれている。ドイツはウクライナ情勢の悪化でエネルギー価格の上昇に直面している。そして輸出主導の成長モデルは中国の成長減速から実力が発揮できなくなっている。また欧州圏お得意のグリーンエネルギーへの移行もコスト面から停滞気味である。自動車産業も米テスラや中国の新興自動車メーカの台頭で競争力が欠如し、ドイツの乗用車生産台数は2010年代の4分の3程度に留まっている。
ドイツの政治を見てもオフラ・ショルツ首相の支持率は19%に低迷している。6月の欧州議会議員選挙とその後の年内に予定される州議会議員選挙では極右政党のドイツの選択肢(AfD)がドイツの最大政治勢力に踊り出る可能性がある。近未来にドイツの経済構造の改革が実現しなければ、欧州経済の浮揚もあり得ない。まだまだユーロ圏の苦難は続きそうである。
本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤り がないことを保障するものではありません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。





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