【ICGレポートVOL.752】ユーロ圏分裂の危機 14/09/2022
- ICGレポート

- 2022年9月20日
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1ユーロ=1.00ドルが割れてから、既に2か月が経過している。7月14日、ユーロドルが0.9952の安値を付け、1対1のパリティを割り込み、2002年12月以来の20年ぶりの低水準となった。その後も通貨ユーロは対ドルで大きな反発は見られない。理由としては、ロシアのウクライナ侵攻が長期化することによるユーロ圏への天然ガスの供給不安、アメリカの連続利上げによる米欧の金利差拡大、そして金利上昇による南欧諸国の財政負担増、及び財政不安の再燃が挙げられるが、今回のユーロ安は長期化しそうだ。
ウクライナ紛争の長期化で、ユーロ圏諸国は天然ガス等のエネルギー供給源の再構築に動かなければならない。安価なロシア産の天然ガスを放棄し、高いエネルギーに乗り換える必要がある。また欧米の金利差は現時点で米2.50%、欧州0.50%であるが、アメリカは今後も利上げを継続するために、欧州もユーロ安に歯止めをかけるべく利上げに動かざるを得ない。
またユーロ安の長期化は輸入物価を押し上げるので、欧州中央銀行(ECB)の利上げによるインフレ抑制が効かない可能性がある。
そしてその先にあるのはリセッションである。ユーロ圏はエネルギーコストの上昇、景気の低迷、失業率の上昇、そして財政問題と3重苦に陥ってしまう。
そこで再びユーロ圏における「南北格差」が蒸し返される。負担の大きいドイツやフランスでは、「時短や長期休暇」を取得しているギリシャ、イタリア、スペイン人に対して、非常に厳しい目で見ている。「我々が一生懸命働いて納めた税金が無秩序な金銭感覚を持つ南欧諸国に注ぎ込まれている」という感覚である。「ブレグジット」で早々にユーロを離脱したイギリスがまさに危惧していたことである。
ドイツやフランスは国内でさえ問題が山積しているにも関わらず、「モラルハザードがまかり通る南欧諸国の面倒まで見ることはできない。」となる。ドイツやフランスのみならず他のユーロ諸国も同様の感情を共有している。ユーロ安が長期化する時、ユーロ圏が分断の危機を迎える。
本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤りがないことを保障するものではありません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。





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