【ICGレポートVOL.887】 デフレ警戒の中国景気 06/09/2024
- ICGレポート

- 2024年9月6日
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中国人民銀行の易綱前総裁は9月6日に上海で開催された「外灘金融サミット」に出席し、「中国はデフレ圧力との闘いに注力すべきだ」と述べた。2024年7月まで22か月連続で前年比を下回る状況が続いていたからだ。不動産不況が深刻化する中、個人消費が低迷し物価が下落するデフレーションが顔を覗かせている。当局は住宅ローンの借り換えや更なる金融緩和でこの難局を乗り切る政策を検討しているようだが、実行に移すにはハードルが待ち構えている。
住宅ローンの借り換えには、財務状況が健全な5大大手国有銀行が挙げられる。中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行といったところであるが、格付け会社のフィッチ・レーティングスは2025年1月までに5行合計で1兆6000億元(約2285億ドル)の資本不足を指摘している。
というのもこれら5大銀行はグローバルシステム上における重要行であるため、国際金融業務を監督・規制する金融安定理事会(FSB)によって、これら5行は2025年1月1日からリスク加重資産の少なくとも16%相当の資本の総損失吸収力(TLAC)が求められる。そして2028年からはさらに18%に引き上げられるので、最大5兆4000億ドルの住宅ローンを借り換えに応じるのは容易ではない。
また資本が疲弊することによって更なるリスクが混在する。銀行経営の健全性が悪化することによって国際格付け機関のムーディーズやスタンダードプアーズ(S&P)は、レーティングを格下げするかもしれない。レーティングの格下げは国際業務に支障をきたすだけではなく、マーケットからの資金調達にも影響する。高い金利を払い、顧客の預金引き出しにも繋がり兼ねない。
また金融政策による金利の引き下げによって企業の設備投資や個人消費を喚起しようとしても金利の引き下げは銀行の利ザヤも縮小するという副作用がある。デフレを防ぐには設備投資や個人消費を刺激する必要があるが、そのハードルはかなり高い。
本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤り がないことを保障するものではありません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。





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